流域に住む vol1~4人家族のバス暮らし

「人の喜ぶ顔が見たいんですよ」と、蔭山康さんはにっこりと笑う。いつかは田舎で自分の店を持ちたいという夢を叶え、静かな森の中の小さな宿を運営し、旅人たちをもてなしている。

弟子屈の市街地から川湯温泉に向かう国道391号線を走ると、左手には森が広がっている。森の中の集落にある小さな宿がお宿かげやま。周囲は自然にすっぽりと囲まれていて、夏場は新緑に抱かれた小径を通ってかげやまを目指すことになる。目印となる看板はない。

「何もないところに惹かれたんです」と話すのは、オーナーの蔭山康(かげやまやすし)さん。蔭山さんは千葉県出身。時間を見つけては釣りやキャンプに出かけており、田舎で自分の店を持つのが夢だった。北海道での生活に憧れて、今から18年ほど前に移住した蔭山さん。宿をやりたいという思いが強くなり、そのために働き続けた。およそ7年間の準備期間を経て、宿をオープンさせたのは41歳のときだった。

これまでに飲食業や営業、内装業など、様々な職歴を経てきたが「人をおもてなしする仕事は転職なのかも」と目を細める。1日2組限定という小さな宿は、ゲストに喜んでもらえることを一番に考えた末に出した蔭山さんの答えだった。

シェフとしても腕をふるう蔭山さんの料理に対するポリシーは、食材はできるだけ地場のものを使い、自分なりの工夫を凝らすことだという。夏場には自家菜園で採れた野菜をいただくこともできる。「ふだん主婦の方が考えないものを食べてもらいたくて」というメニューは、野菜が豊富で色鮮やか。魚や肉を組み合わせることで魅力的なハーモニーを生み出している。

「雪に覆われて何も見えなくなってしまう冬場もおすすめですよ」と蔭山さん。ぜひ静かな森の中で心を潤す至福の時間を過ごしてもらいたい。

昔仲間と過ごしたスキーのロッジがイメージ。山小屋風の造りでゆっくりとした時間を過ごせる。昔仲間と過ごしたスキーのロッジがイメージ。
山小屋風の造りでゆっくりとした時間を過ごせる。
経験を活かしシェフとしても活躍する蔭山さん。創作的な料理は心を楽しくさせる。経験を活かしシェフとしても活躍する蔭山さん。
創作的な料理は心を楽しくさせる。
オーナーの蔭山康さん。オーナーの蔭山康さん。
思わず見落としてしまいそうな森の中に建物がある。思わず見落としてしまいそうな
森の中に建物がある。
温泉は源泉かけ流し。露天風呂のほか内湯もあり、貸切で浸かることもできる。 温泉は源泉かけ流し。露天風呂のほか内湯もあり、
貸切で浸かることもできる。

お宿かげやま
弟子屈町美留和368-43
TEL 015-482-6030
http://www.oyadokageyama.com/

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